第9章 ヘイアン国
さっさと船に戻ろうとするローの足にマリオンは恥もかなぐり捨ててしがみついた。
「俺には命を掛けても果たさなきゃいけない役目があるんだよぅ!」
「そうか、がんばれ」
「だからちゃんと離れるわけにいかないんだって!」
「――あ?」
口を滑らせたマリオンを、ローとペンギンが同時に見た。マリオンは明らかにしまったという顔をして、血の気を引かせながら視線をそらす。
「どういう意味だ」
詰問するローに、マリオンはダラダラと脂汗をかきながら「ナ、ナニガ?」とすっとぼけようとした。一ヶ月ほど獲物にありついていないライオンに、空腹も忘れるほど面白いジョークを言えたら見逃してやると言われたような顔色だった。
マリオンの襟首を掴み上げて、ローは「悪いが急用ができた」とローはネルセンに告げた。
「こちらとしては、ヘイアン国まで先導してくれるなら深入りする気はない」
「私はもっといろいろ、伺いたいことがあるのですが!」
後にしてくれとハンゾーに言いおいて、ローはマリオンを連れてポーラータングへ戻った。ハートの海賊団の船長は、口を割らせるためなら手段を選ばないという目をしていた。