第2章 グランドライン
「ペンギンはご飯の担当じゃないの!?」
「いやそれもやるけどね……好きでお母さん担当してる訳じゃないのよ」
なにかに気づいてローはハッとした。
「お前それでたまにあの気色の悪い裏声使ってんのか!」
「いやそれはただの悪ノリ……」
予想外の解釈にペンギンは引き気味で答える。
「キャプテンってたまに天然だよね」
の指摘にキャプテンは「うっ」とショックを受け、
「が言う?」
マストから滑り降りたベポに「ベポが言うなよ」とシャチが突っ込んだ。
◇◆◇
効率的に敵船から物資を奪うなら潜水して近づき、奇襲をかけるのが手っ取り早いが、それにはソナーであるの協力が不可欠だ。に悪事の片棒を担がせるのは気が引けて、ローは互いに双眼鏡で視認できる距離になると甲板でシャチに交渉の旗を振らせた。
「シャチは何をしてるの? この音なに?」
バサバサと布が風を切る音に、は小首を傾げてペンギンに尋ねた。
「手旗信号って言って、左右に紅白の旗を持ってその動きでメッセージを伝えるんだ。例えば、両方横に上げたら数字の1、赤だけ上に上げたら数字の2っていう風に」
「へー、面白い」
「電伝虫を使えば早いんだけどね。相手が持ってるとは限らないから。……おいシャチ、今間違えたぞ!」
「覚えろって言っただろうが!」
容赦のない船長の蹴りの音には肩をすくめる。
「私も覚えないといけないかな?」
「手旗信号はどうかなー、電伝虫の普及で廃れつつあるものだし。むしろトンツーのほうがにはいいかも」
「トンツー?」
「ちょっと手を出して」
不思議そうにが手を出すと、ペンギンは最初に指一本で短くの手を叩き、次に二本の指でゆっくりの手を叩いた。
「違いがわかった?」
「うん」
「これがトンツー。短いのがトンで、長いのがツーね。この2つの信号を組み合わせることで全部の文字を表現できる」
「うん?」