第2章 グランドライン
「いやそんな静観してないで! こっちが晩飯になりそうなんですよ!!」
海獣との戦闘が始まった甲板から悲鳴が聞こえてくる。
「ペンギンを生で食べたら海獣がお腹壊しちゃうね」
「そっち!? 俺の心配してよ!」
「お尻のお肉はきっと美味しいかも」
「そうじゃなくて!」
思わず吹き出し、我慢できずにの頭を撫でて、ローは鬼哭を手に甲板へ出た。
「ああ、良かったキャプテン!」
「来てくれたんスね!」
「お前ら食った海獣なんか食ったら俺たちが腹壊すだろ」
その夜、ハートの海賊団はおいしいステーキを腹いっぱい平らげた。
◇◆◇
「キャプテーン! いたよ船! の言ったとおりだ!」
グランドラインを漂流するハートの海賊団が船を見つけたのは、海獣ステーキを平らげた次の日のことだった。
は覚えが早く、あっという間にソナーを使いこなし、それによって20キロも先で帆船が航行する音を聴き分けたのだ。
「商船か?」
「ええと……違う、海賊船! 海賊旗が見える!」
双眼鏡を覗いてベポはマストの上から報告した。
「物資の交渉をするぞ。最優先はログポース、次点で食料と女物の服だ」
海賊船に女物の服はないんじゃ、とみんな思ったが、ぶかぶかの服を着続けているの前では落胆させるようなことは言えなかった。
「交渉したら同じ海賊のよしみで物資を分けてくれるかな?」
「いやー、それは難しいんじゃないかな」
の疑問にペンギンは乾いた笑いで応じる。
の前なのであえて船長は「襲って奪うぞ」という直接的な表現を避けたのだろうが、そんな穏便な交渉が成立するなら海賊は市民からこれほど恐れられてはいないだろう。
「やっぱり戦闘になる?」
「うーん、場合によっては」
「そっか」
小さく拳を握り、妙にやる気を出しているにローは釘を差した。
「……交渉の間、はブリッジで待機だ」
「えー!」
「危ねぇだろ。物資は平等に分けるから心配するな」
不満そうなをクルーたちがなだめる。
「は船を見つけたし」
「そうそう、役割分担だって。はソナーの担当、俺らは戦闘の担当」