第8章 セブタン島
ホテルに戻って荷物をまとめながら、ローはため息をこらえきれなかった。
(クソ、イチャつき足りない……)
船に乗ったら当分そういうことはおあずけだ。予想外に出航が早まって、どうにも名残惜しかった。
「……キャプテン。船に戻る前にもう一回キスして」
救いはも同じ気持ちでいてくれることだけだ。抱きしめてキスしながら、押し倒したくて仕方なかった。
「プールに行けなかったね」
「行かなくてよかったよ」
その分を優先して正解だった。それでも全然、足りないが。
「さっさとマリオンの問題片付けて、どっかに二人で一ヶ月くらい泊まろう」
「ええ。その間みんなは?」
「休暇。喜ぶだろ」
想像したのか、は「楽しみだね」と頷いた。
「プールでも何でも、次はの好きなこと優先する」
抱きしめて髪を撫でると、は「約束だよ」と笑って念押しした。
――その約束を、ローは果たすことができなかった。
かくしてハートの海賊は出航し、ヘイアン国へ向かう。
このセブタン島が、ローがと恋人同士でいられた最初で最後の島だった。