第8章 セブタン島
「落ち着け。ここで死んだところで無駄死にだろうが」
ローに指摘されて、ぐっとマリオンは黙る。
ヘイアン国の船はすぐにでも出港しようとしていた。アルゴールはあれに乗るつもりだったようだが、捕縛された以上、待つのもバカらしいという判断なのだろう。
特使の船なら海軍もやすやすと手は出せない。だがアルゴールが余計なことを喋れば追及は避けられず、出港を急ぐ様子に、面倒事を避けようとする魂胆が透けて見える。
「……生贄を助け出したとしても、代わりの儀式が要るんだろ。やり切る覚悟があるのか?」
船に密航したとき、兄がやるはずだった俺にはできないと喚いていたマリオンは、ローを見返し、「やる」とはっきり頷いた。
「もう俺しかいないんだ。国に戻って儀式をやる。……どんな結果になるかは、わからないけど」
「……ならいい。ペンギン、急いで必要な物資を搬入しろ。ウニは一度船に戻って、ゴンザと出航の用意をしとけ」
アイアイ、と彼らは当然のように船長命令に従って動く。それを呆然と見るマリオンの手を両手で包んで、は「一人で突っ込んで自爆なんてダメだよ」と言い聞かせた。
「みんないるから。力になるよ。仲間だもん」
「どのみちブラッドリーには借りがある。ヘイアンにいるのなら殴り込みに行くだけだ」
と船長の言葉に涙腺をゆるませるマリオンの肩をぽんと叩いて、ペンギンたちが続ける。
「バイトばっくれだからな。責任持てよ」
「一緒に怒られに来い」
「親方怖いんだよー」
笑ってウニは、爆薬の入った木箱を片付けた。
「これはもういらないね。船に戻しておくよ」
「……ありがとう」
こらえきれず泣き出したマリオンの頭を撫で、「ミニベポ貸してあげようと思ったらお留守番させてたんだった!」とは失態におののいた。