第8章 セブタン島
「キャプテンあっち!」
南の隠し港とやらを探し出せずに少し手間取ったが、が入江の向こうからベポたちの声が聞こえると言って、無事クルーたちの居場所を見つけることが出来た。
は最近、聴覚で聞き取れる範囲以上の『声』を聞き取っているような気がする。
「マリオン……っ」
ローがを下ろすと、彼女は3人がかりで押さえ込まれている仲間のところに駆け寄った。
マリオンのほかに集まっているのはバイト組の3人と、大量の爆薬を持ったウニ。聞けばマリオンに持ってくるよう指示されたそうで、困惑顔でローを見上げてくる。
「何があったの?」
船を爆破すると暴れていたマリオンは、の顔を見てやっとおとなしくなった。ほっとして、ペンギンたちもようやくマリオンを離す。
「故郷の……ヘイアン国の船が来てるんだ。ブラッドリーと組んで俺の家族を殺した女が乗ってる。この島で奴隷を仕入れて生贄にする気なんだ。ここで船を沈めれば、少なくともこの島の女の子たちを俺の国の問題の巻き込むのは避けられる」
確かなのか、とローはペンギンに尋ねた。
「ヒューマンショップは爆破されただろ。この島にいま奴隷はいないはずだ」
「その爆破自体、ブラッドリーの仕業じゃないかって。現に大量の奴隷が船に乗せられたのは俺たちも見てます。このあいだ父親に殴られていた、あの女の子もいました」
「生きてたのか?」
てっきりあの爆発に巻き込まれたと思っていたのに。ローの驚きぶりに驚いて――ローが爆破のときヒューマンショップにいて、彼女が競られるのを見ているのを知らないので無理もない――、ええはい、とペンギンは頷いた。
「全員で確認しました。彼女に間違いないですよ」
マリオンの手を握って彼が駆け出したりしないよう引き止めながら、は「船に爆弾は仕掛けられそうなの?」と尋ねた。
遠眼鏡で状況が変わっていないのを確認し、シャチが気の毒そうに首を振る。
「警備が厳重でとても近づけそうにない。自爆覚悟で行ったところで、撃ち殺されるのがオチだ」
「死んだっていいさ! ここで指をくわえて見ていたら、俺はヘイアンの恥知らずもいいところだ……っ」
マリオンは興奮して、とても冷静にものを考えられる状態ではなかった。