第8章 セブタン島
「話はいいの?」
「あー、に聞いてもらうほど、大したことはなかった」
「ケガは?」
「油断してたら海兵にボコられた」
「ツバメ君? キャプテンより強かったの?」
「……今はな。次は負けねぇさ」
妙な展開になったせいでにケガさせた分をやり返すことはできなかったが、自分より大事な上官が死にかけて、その辛さは十分思い知っただろう。
次に会うことがあれば、しれっと今回の分も上乗せしてやると密かにローは誓った。
「……キャプテンが元気でよかった」
ローの背中に手を回して、は心底優しい声で言う。
「……がいるからな。何があっても怖くなかった」
「ほんと?」
「ああ」
感極まった様子で、はぎゅーっとローに抱きついた。
「うれしい。私もキャプテンのためなら何でもできるよ」
髪を撫でて、キスして、笑い合って。そんなことが幸せで仕方なくて、の服を脱がせようとしたところで、子電伝虫が盛大に鳴った。
「……もしもし?」
いいところを邪魔されて不機嫌に低い声で出ると、ベポの悲鳴が響き渡った。
「キャプテーン! 助けて! マリオンが船を爆破するって……っ」
「ああ!?」
思わず飛び起きてどういうことだと問い詰めるが、パニックになったベポの説明は要領を得なかった。
「マリオンの故郷の船が来て! 奴隷をいっぱい積んでるんだ! 生贄にするためだからここで沈めるってマリオンは言い張ってて……っ」
「すぐ行くから縛り付けとけ。場所は?」
「南の崖に囲まれた隠し港のところ――」
「わかった」
ガチャ切りして、ローは鬼哭を拾い上げる。
「――」
「私も行く!」
クマ耳のついた麦わら帽子と杖を持ってきて、すでに彼女は準備万端だった。
「ミニベポはお留守番ね」
ぽんぽんとぬいぐるみの頭を撫でたを抱き上げて、「急ぐからしっかり掴まってろ」とローはホテルのベランダから飛び出した。