第8章 セブタン島
「また花火にされたみたいな匂いもするよ」
「……いろいろあってな。どれもかすり傷だから心配いらない」
「座って」
ローの手を引いてソファに座らせると、は手探りでローが持ってきた治療道具箱を見つけ出し、持ってきた。
「ええと……」
匂いをかいで薬を探そうとするを制して、「最初はこれだな」とローは消毒液を手渡した。
清潔な布に染み込ませると、は手探りで傷を確かめ、ローの傷の手当をしていく。
「しみる?」
「ちょっとな」
「ミニベポ貸してあげるね」
これをどうすればいいんだろうと思いながら、いわく治療には必須アイテムらしいので、おとなしくローは抱えておくことにした。クルーには見せられない光景だ。
「包帯まくね。苦しかったら言って」
「ああ」
たるまないよう丁寧に巻いて、最後には包帯の上から傷口にキスした。
「ん?」
「早く治るようにおまじない」
「へぇ、いいな」
じゃあの手にも、とローは包帯の巻かれた彼女の手を取って、手の平と手の甲の両方に口づける。
「こっちもだね」
ツバメに切りつけられた右手もは消毒して包帯を巻いてくれた。
「おそろいになっちゃった」
自分の手にも巻かれた包帯を示して、は苦笑する。
「どうせならもっといいおそろいが欲しいな」
ぬいぐるみを返して代わりにを抱き寄せながら、どんなおそろいならペンギンに勘付かれないだろうかとローは真剣に考えたが、妙案は浮かばなかった。
「ミニベポもおそろいにしてあげる」
あまった包帯をぬいぐるみに巻くのに夢中になるからミニベポを取り上げて、「俺の前で仮病は禁止だ」とローはもっともらしく言った。
「ファッションだよ」
「医療道具で遊ぶのも禁止だ」
「……かまってほしい口実でしょ?」
「わかってるなら、かまってくれ」
ソファに押し倒すと、は楽しそうな笑い声を上げた。