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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第8章 セブタン島



『ナギナギの実のことを教えたのはあたしなんだよ。カナヅチになるのが怖くなければ食べてもいいと脅かしてね。あの子は「能力者になるなら青キジみたいな格好いい能力がいい」と子供らしいことを言っていたのに、あんたのためにナギナギの実を食べたんだ』

 ロッティの泣き声が天竜人に聞こえないように。外を走り回る大人たちの声に、ロッティが怯えないように。

『誰よりも強くて優しい子だ。だからあんたもあの子に、恩返しをしなきゃいけないよ』
『うん……私、ロシーのお嫁さんになって絶対ロシーを幸せにする』

 普通逆なんだけどね、とは言わずに、おつるは笑った。

『ああ、きっとそれが一番の恩返しだね』


◇◆◇


「サボテン……!!」

 飛び起きると同時に叫んだロッティに、ベッドのかたわらに座っていたツバメが「なんなんですかその夢」と冷たく応じた。

 見慣れた自分の軍艦の医務室だった。状況がつかめずロッティは混乱し、ツバメに尋ねた。

「私のサボテンは?」
「海に捨てました」
「なんだとてめぇ!!」

 胸倉掴んでがくがく揺さぶったが、サボテンはツバメの後ろにちゃんと隠されていた。ほっとするのと同時に、くらっときて、ロッティはへたりこんだ。

「大人しくしてたほうがいいですよ。頭にもろに衝撃がいったみたいなので」
「……そう。だから興奮させるのよくない」

 気配もなく、医務室のすみにヒョウが体育座りをしていた。イスは空いてるのになんでわざわざ床に座るのかよくわからない。たぶん落ち着くからなんだろうが。

「頭に衝撃……? なんだっけ、ツバメ君に殴られたんだっけ?」
「事実無根の濡れ衣もひどいところですよ!!」

 言ってみただけで、ロッティもそれは疑ってなかった。
 仲間とうまくやれず、殴り合いどころか殺し合い未遂まで何度もやらかしている狂犬だが、実はロッティに手を上げたことは一度もないのだ。

「んー? サボテンの手入れしてたのは覚えてるんだけど」
「毎日の日課でしょ、それ」
「どうしたのその手」

 ツバメの両手には包帯が巻かれていた。彼はそれを背後に隠し、「別に」とそっぽを向く。
 背後でヒョウがサボテンの入った鳥籠を両手で指したが、意味はよくわからなかった。

「思い出せない。報告してツバメ少尉」

 考える気もあまりなかったので、ロッティはさっさと命令した。
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