第8章 セブタン島
「待ちなさい、トラファルガー・ロー!」
「うちのクルーがいねぇならお前らに用はねぇ」
コラさんと縁の深い彼女と正面からやりあうのも気が進まず、ローはさっさと撤退を決め込んだ。
「逃がすか!!」
空中を走るような身体能力を発揮して、ロッティ(体はツバメ)はローに斬撃に等しい蹴りを繰り出した。岩場がえぐれ、ローは慌ててROOMを広げる。
「あんたにはまだヒューマンショップ爆破の嫌疑も残ってるのよ!」
「俺じゃねぇって言ってるだろ。体に爆弾巻いた奴隷が一斉に自爆したんだよ――」
殴りかかるロッティを切り刻もうとした瞬間、彼女の背後で爆弾が爆発した。気づけばローと海軍たちは、体に爆弾を巻いたものたちに取り囲まれていた。
「……あんな感じ?」
「……ああ」
それは不気味な、人形の集団だった。
68.バイト現場
ベポたちのバイト先は島の表側、新たなリゾートホテルの建築現場だった。
「よっ。稼いでるか? 差し入れ持ってきた」
バスケットを片手にやってきたのはマリオンだった。汗だくだったベポ、ペンギン、シャチは休憩時間に足場の上で海を見ながらマリオンの持ってきたおにぎりをかじる。
「なにげにこないだが作ったやつより凝ってるな……」
複数の具が入った妙にレベルの高いおにぎりに、マリオンがドヤ顔をする。
「フッフッフ、そこそこに何でもできる男と呼んでくれ」
うざい仲間の主張に、シャチとペンギンは冷たく応じた。
「そこそこ止まりだけどな」
「希少価値はの作ってくれたおにぎりのほうが断然上だわ」
ガーンと大げさに傷ついたアピールをし、マリオンは腰をくねらせて二人に懇願した。
「誉めてよぅ」
「おいしいよー、マリオン」
両手におにぎりを持って口元にいっぱい米粒をつけたベポがニコニコと応じた。建設バイトは重労働だが、とても痩せられそうにはない食べっぷりだった。
「他のみんなはどうしてる?」
「ウニはいつもの機械いじり、ゴンザもエンジンの調子が悪いから調整するって船にこもってるよ。ちゃんとキャプテンは、海軍に目をつけられたからしばらく身を隠すってさ」
うーむとペンギンはうなった。