第8章 セブタン島
「私にとってロシーは何でも言うことを聞いてくれる兄のようで、いつだって私のことを守ってくれた。ちょっと過保護のきらいはあったけどね。私を守るためだけに悪魔の実を食べるくらいだもの」
「ナギナギの実を……?」
何の役に立つんだと責め立てるローに、彼はぐさりと傷ついた顔をして、でもなぜ食べたのかは語らなかった。てっきり彼のことだから、なにかドジってカナヅチになるはめになったのだろうと思っていたが――。
「気になる? ……残念、教えないわ」
ロッティは意地悪く含み笑いをした。
「……そうかよ。なら俺も喋らない」
奇妙な気分だった。コラさんのことを、彼を知ってる人間と喋りたくてたまらないと同時に、こいつにだけは喋りたくないような。
多分、自分のほうが彼を知っているという顔をされるのが嫌なんだろう。
実際そのとおりのだと感じて、負けた気分になるのを避けたかったのだ。
「大丈夫よ。檻に入れば、お喋り以外することがないんだから。すぐ気も変わるわ」
海楼石の手錠を持った海兵がにじり寄る。あれのおかげでホワイトガーデンではえらい目にあった。もう二度とごめんだ。
「――ROOM!」
ロッティが散弾銃の銃口を向け、ナイフを握ったツバメが突っ込んでくる。ローが攻撃を仕掛けるより二人のほうが早く、位置を入れ替えたところですぐに対応されてしまう。
「シャンブルズ!」
ローは二人の『中身』を入れ替えた。
「え……!?」
「え、あれ……!?」
現実を受け止めきれず、ロッティの体に入ったツバメが、夢かと確かめるように豊満な胸を揉む。そして鼻血を吹いて倒れた。
「こらぁー! 人の体で勝手に鼻血を吹くなー!」
ツバメに入ったロッティが叫ぶが、倒れたツバメはぴくりとも動かなかった。
「た、大佐……!?」
不器用な上官によってヘンテコオブジェ風に体をくっつけられた海兵たちが駆け寄るが、「私はこっち!」とツバメが叫んでなおさら彼らは混乱した。
その隙にローはツバメに外された肩を入れ直した。