第8章 セブタン島
「この狂犬!」
「しつけを覚えろ!」
「あほんだらー!」
「……えらい嫌われようだな」
単身八千万の首に海賊に挑もうという仲間に、罵倒が飛ぶなんてめったにあることではなかった。
海賊のほうがまだマシじゃないかとローは思った。うちのクルーなら、やベポを筆頭に、全力で応援してくれるだろう。
「飼い主のしつけが悪くて」
「ちょっと! こっちに責任押し付けないでよ! ちゃんとやってるわよ! 言うこと聞かないのは性格でしょ!」
「サボテンばっかりでちゃんと僕を構わないからですよ」
「何だその遊び盛りの犬みたいな理屈は!」
部下をくっつけようとしているロッティを冷たく見やって、ツバメは鼻を鳴らした。上司に対しても非常に感じが悪かった。
「漫才見に来たんじゃねぇんだぞ……っ」
焦燥にかられて、ローはツバメに斬りかかる。触れるものすべてを切り刻むオペオペの実の斬撃を、ツバメはひらりとかわした。
斬撃を避けながら、ツバメは徐々にローに近づいていく。
(なんで当たらない……っ)
とうとうツバメのナイフは、直接ローの刀とぶつかり合う距離にまで迫った。
短い切っ先が生き物のように動き、鬼哭の刃を受け流してロー首を切り裂く。位置を入れ替え距離を取ろうとしても、影のようにツバメは付いてきた。
「……君じゃ僕は斬れない」
刀を掴んだ指が切られる。痛みに握力が逃げ、そのタイミングを逃さず切られた右手が蹴りつけられた。刀が飛び、ローは砂浜に押さえ込まれる。踏みつけてローの動きを封じると、腕を掴んでツバメはローの肩を壊した。
「が、ぁ……っ!!」
「削ぎ落とされるならどこからがいい? まずは耳か、それとも爪か」
拷問し慣れているかのような平然とした声。ROOMを広げようとしてもうまくいかなかった。ローの能力は使用に一定の体力と気力を必要とする――。
「そのくらいにしておきなさい。不必要な拷問は犯罪よ」
「殺したほうが手間がないですよ。エニエスロビーまで連れて行くのは面倒だ」
部下の体を元通りにしようとしていっそう奇っ怪なオブジェを作り上げたロッティが、交代しなさいとツバメに求めた。