第8章 セブタン島
「……ん?」
ロッティたち港の海軍が騒ぎに気づくのと、切断された巨大な岩場が切り刻まれた兵士たちごと飛んでくるのは同時だった。
「逃げろー!!」
槍のように飛んできた岩場は海軍たちの真ん中に突き刺さり、オブジェのようにバラバラにされた兵士たちがくっついていた。
「た、大佐……っ」
「誰か助けてくれー!」
岩場にくっついてうねうねと動く手足は気持ち悪いことこの上なかった。
「カルマートが……『静か』の意味がないわね」
騒がしい部下たちの姿にロッティはがっくりとうなだれた。一応暗殺が専門の自慢の部隊だったのだが、まだまだ訓練が足りなかったようだ。
「うちのクルーはどこだ?」
突き刺さった岩場の上に着地して、ローは念の為尋ねる。
ロッティは横の自分の副官を見た。
「ツバメ君、あなたどんな呼び出し方したの」
「恥ずかしくて言えません」
頬を染めてツバメは報告をイヤイヤした。げんなりしてロッティは「私が聞くとセクハラらしいわ。自分で聞きだしたら?」とローに丸投げする。
「……てめぇにはの指の落とし前も付けさせねぇとな」
「別に僕はケガさせようとしたわけじゃないですからね」
「……わかってるって」
なぜかこっちを見て力説されて、ロッティはいいからそっちに集中しなさいと手を振った。
ツバメは水着のときまで携帯していたナックル付きのナイフを両手に構え、俊敏な狩猟動物のように走り出した。
「ROOM――」
ローは能力領域を広げ、どうバラしてやろうか思案した。当分一人では食事もできない状態にしてやらなければ収まらない。
だがツバメはローの能力を一切警戒もせず走り続けた。足を緩めずローの立つ突き刺さった岩場に向かい、渾身の力で殴りつける。
岩場は粉々に砕け散った。
(マジかよ……っ)
足場がなくなり、ローは慌てて退避する。少尉と思って甘く見た。
「このアホー! 巻き添え考えろ!」
「俺らのこと考えてんのかバカヤロー!」
バラバラにされて岩場にくっつくオブジェにされていた兵士たちが味方に怒る。
ツバメは「先輩方なら自分でなんとかするかと」としれっとしたものだった。