第8章 セブタン島
西の港には海軍が集結していた。
(やっぱり、ベポたちはいねぇな……)
少し離れた高台の岩場から双眼鏡で確認し、お粗末な作戦にローは呆れた。
本当にクルーを捕縛したなら、電伝虫を不通にする意味はない。捕縛ができていないから連絡を取らせぬために、苦肉の策で通信を遮断したんだろう。
ヒューマンショップの爆破の件から、ローは船を島の裏手の海底に移動させていた。海底の岩場に隠れた船を見つけるのは至難の業だ。バイトに行ったベポたちも汗水垂らして労働に励んでいるはずなので、海賊と見破られた線は薄いだろう。
(モア一人なら話をしてもよかったが……あれじゃ無理だな)
を待たせているし帰ろうと双眼鏡を下ろすと同時、背後から頭に銃口が突きつけられた。
「武器を下ろして、ゆっくり両手を上げろ」
真っ先に頭に浮かんだのはドフラミンゴファミリーから差し向けられた刺客。だが奴らなら警告などしない。標的を見つけたら即座に頭に鉛弾をぶち込んでくる。
(近づく音がしなかった……ナギナギの実の能力か)
言われたとおりにローはゆっくりと立ち上がり、「ほらよ」と双眼鏡を敵の背後に放り投げた。
「おい! 妙な真似を――」
「シャンブルズ」
双眼鏡と自分の位置を入れ替えたローは、そのまま敵の首を両断した。
「貴様、俺に何を……っ」
「黙ってろ。舌噛むぞ」
両断された首をぽんぽんと弄ぶと、「ぐえ」と声を上げて海兵(の首)は黙った。
そこに降ってくる、無音の銃撃。
「おっと」
飛んでくる銃弾をローは付近の砂と入れ替えた。発射音も着弾音もしない銃撃は不意打ちされれば確かに脅威だが、ROOMの中なら関係ない。
「流れ弾が当たるかもしれないってのに冷たいお仲間だな」
銃撃は無意味と、銃剣を持って一斉に駆け寄ってきた特殊な兵士たちを、ローは上に飛んでかわす。
(……を連れてこなくて正解だったな)
そして岩場ごと、兵士たちをバラバラにした。