第8章 セブタン島
「機嫌は直ったか?」
「……まだ」
「困ったな」
苦笑する彼の声が好きで、つい困らせたくなってしまう。でもあまりやりすぎると、嫌われてしまうかもしれない。
(もっと素直にならなきゃ……)
好き、と勇気を振り絞って言おうとしたのに、それより早く耳元で「好きだ」とささやかされた。
「だからそろそろ、許してくれ」
ぎゅーっと心臓を鷲掴みにされたみたいだった。
(ずるい……っ)
そんな風に言われたら何も逆らえない。抱き起こされ、キスされ、嬉しくて大好きで心臓が壊れそうだった。
「……キャプテンの女たらし」
「なぁ、のその俺が女癖悪いイメージってどこから来てるんだ」
「そういうことぽんぽん言う男は悪いやつだってエリザが言ってたもん」
「……例の友達か。まあ同意しないでもねぇんだけどな」
俺はにしか言ってない、と言われて、勘違いしそうになる。
「だ、騙されない」
「……その顔は反則だろ」
「え?」
「自覚なしか。……こそ悪い女だな」
困惑している間に押し倒されて、服を脱がされた。
(好き……)
同じ行為なのに、海賊に無理強いされるのとは全然違った。触ってもらえるのが嬉しくて、愛撫が気持ちよくて、好きが溢れてすぐにいっぱいいっぱいになってしまう。
「本当に敏感だな……」
可愛いとキスされて、もっと、と求めずにいられなかった。
「キャプテン好き。大好き……っ」
「泣くほどか? どっか痛いのか?」
つながりながら狼狽するほど心配されて、伝わらないもどかしさには「痛くないもん」と顔をそむけた。
気持ちよくて幸せで涙が出てくるだけなのに、全然わかってくれない。
ちょっとすねた気分でいると、「に泣かれると条件反射で焦るんだよ」と機嫌を取るように目尻にキスされた。
「痛くないなら笑ってくれ」
「……いまそういう気分じゃない」
困った気配がして、両手でほっぺをくいっと持ち上げられた。抵抗してペチペチ叩くと、「お、猫パンチだな」と笑われる。
「シロクマパンチ!」
「大型肉食獣は勘弁してくれ。死ぬ」