第8章 セブタン島
「そんなこと言われて出頭する海賊はいないよ」
「そうだな」
平静を装いながら、ローはに隠れて子電伝虫で船に連絡を取る方法を考えた。もともと船にいた電伝虫(命名のデンデン)とホワイトガーデンからウニが持ち込んだ電伝虫が番になって子供を生んだので、一人一匹携帯できるようになっていた。
うまいことをごまかして、ローは船の安否を確認しようとしたが――。
「おい、どうなってる! 電伝虫が通じんぞ!?」
店員に食って掛かる貴族の声に、ローは席を立つのを思いとどまった。
「申し訳ありません。海軍がなにかの作戦とかで電波妨害を――。島の全域で今、電伝虫は不通になっています」
「何ぃ!? 一体いつ回復するんだ!」
「あすの夜明け以降にはと――」
怒鳴り声に不安になったのか、は無意識にローの隣に来てぴったりくっついた。
「なんだか大変みたいだね」
「……バカな作戦だな」
「……?」
意味がわからず不思議そうな顔をしたにキスして、「ホテルに戻ろう」とローはささやいた。
64.恋のずるさ*
「。指痛くないか?」
ホテルに戻り、先に包帯を替えようとをベッドに座らせ、ローは傷口を消毒した。傷跡はすっかりかさぶたになって、もう少しで抜糸もできそうだ。
「うん。痛みはもうあんまり。でも……」
「どうした?」
深刻な様子では訴えた。
「すっごくかゆいの」
「治ってる証拠だな」
どうしようもないから諦めろと諭して、ローは包帯を新しく巻き直すとをベッドに押し倒した。
「ん……」
(ああもう……)
考えなくてはいけないことが他にもいろいろあるのだが、に触れるとみんな吹き飛んでしまう。
ドンキホーテファミリーのヒューマンショップを爆破したことになっていることとか、一応ベポたちの心配とか。とりあえず夜明けまでは考えるのをやめておこうと、ローはを堪能した。
「く、首はダメって言ってるのに……っ」
「じゃあこっちか?」
「耳はもっとダメ……!」
真っ赤になっては怒り、「交代!」とローと位置を入れ替えた。