第8章 セブタン島
「はロマンが足りないな」
「そ、そう?」
「口説いてるつもりだったのに気づいてくれないんだからな」
「おにぎりがキャプテンの口説き用語なの?」
「俺はおにぎりなんて一言も言ってない」
困惑するに笑い倒して、「実力行使するしかねぇな」とローは彼女の髪を指先に絡めて遊んだ。
は気まずそうに体を引き、「キャプテン、呼ばれてるよ」とあからさまに話を変えようとする。
「んー?」
ごくごく小規模に能力範囲を広げて、イスごとを引き寄せながら、ローは生返事した。
イスが動いてることにびっくりして固まっているを捕まえ、「麦クマ捕獲完了だな」とローはで遊ぶ。
「もう! キャプテン、呼ばれてるってば!」
怒ってに押しのけられ、やっとローは「何に?」と聞き返した。
「スピーカー」
「……?」
広報用に設置された島のスピーカーから流れてくるのは雑音ばかりだ。何も聞き取れず首を傾げるローに、はノイズの信号に合わせて指でテーブルを叩き、「トンツーだよ」と解説した。
「Trafalgar…l…a……w。ほら、やっぱりキャプテンを呼んでる」
「なんて?」
「トラファルガー・ローに告ぐ、って。あとは……わからない。変な文字の羅列みたい」
「暗号か。、スペル読み上げてくれるか」
「いいよ」
近くで旅行記を書いていた男から能力でペンを失敬し、ローは紙ナプキンにが読み上げる意味不明な文字列を書き記していった。
「海軍が使う簡単な暗号だな。適当な解読キーで読み解ける。俺宛ってことは……」
外科医、ハートの海賊団、など思い当たる単語を入れていったところ、『ロシナンテ』で解読することができた。
『トラファルガー・ローに告ぐ。仲間はすでに捕縛した。明朝処刑する。助けたくば夜明けまでに西の港に出頭せよ』
暗号なんてスパイみたいとはしゃいでいたが、解読の気配に「なんて?」と身を乗り出した。
「……明日の夜明けまでに出頭しろってさ」
紙ナプキンを握りつぶして、ローはうそぶいた。