第8章 セブタン島
「……キャプテンいい匂いがする」
昼食の売店に並びながら、はローに鼻を擦り寄せて笑った。
香水店のあとは観光客向けのショップをあちこち見て回り、に似合いそうな麦わら帽子を買った。クマ耳付きの帽子をはたいそう気に入って、さっきからずっと上機嫌だ。
「惚れ直すだろ?」
「これ以上? どうかなぁ――でも」
はローを引っ張り、耳元で囁いた。
「今すぐ抱いて!って気分にはなるよ」
(ああもう……)
可愛すぎてどうしようもない。
「ホテル戻るか?」
「ごはん食べてからにしよう」
せっかくここまで並んだし、と言われ、そのとおりなので言うとおりにする。
「は何にする?」
「トマトの入ってるサンドイッチ。キャプテンは?」
「俺は最初から決めてる。一番でかいハンバーガー。パンなしで」
「パンなしのハンバーガー……」
それってもはやハンバーガーと呼べるのだろうかとは首を傾げ、店員にも3回「パンなしのハンバーガー!?」と聞き返された。
広場にはパラソル付きのたくさんのイスとテーブルが並んでおり、その周囲を取り囲むように露天が建ち並んでいる。昼を過ぎたとは言えまだ行列の出来ている店も多く、人でごった返していた。
なんとか空いている席を見つけ、ローはの手を引いて座らせた。
「いただきます」
が食事する様子は、なんとなく、小動物がエサを一生懸命頬張るのを連想させる。
「ソースついてるぞ」
見てて飽きないなと思いつつ、ローはの口元についたソースを指先で拭い取った。に手を取られ、指先のソースを舐め取られる。柔らかい舌の感触に、心臓が跳ねた。
(ああ早く、ベッドに引きずり込みたい)
視線に気づいたのかは頬を染めて、「早く食べて」とローを急かした。
「も早くホテルに戻りたいって?」
「……キャプテンに見られてるとドキドキして困るよ」
「俺も、ハンバーガーより食べたいものがあって困ってる」
「……おにぎり?」
素で言われてローは吹き出した。