第2章 グランドライン
「音波を出して反響で海中を探査する装置だ。こいつはネモ博士が考案した発明した最新式で、パッシブとアクティブの2種類のソナーを切り替えて使うことができる。耳のいい水測員さえいりゃあ、敵船や大型海獣の方位と距離を海中にいながら把握することが可能だ」
ぽかんとするに使い方を教えるため、ローは説明書を開いた。
「キャプテンそれ無理くないスか」
「そうだよー、みんなで試してみたけど水中の音の聴き分けなんて誰もできなかったし」
「まだそのガラクタ使うの諦めてなかったんですかキャプテン」
トイレ掃除を終えてやってきたシャチまでもが呆れて言う。
「ガラクタ言うな! 大体これが使えなきゃ潜水艇なのに潜れねぇんだぞ」
グランドラインの海には特に多くの海獣や、危険な海流があふれている。それらを目視で確認できない海中に運頼みで潜ることはできなかった。
「いいんじゃないですか、このまま帆船として使えば」
「別に潜れなくても不便はないし」
「俺、海に潜るなんて怖いよー。狭いとこ怖いし」
「何のための潜水艇だ!」
ローの味方は自分の仕事に興味津々でヘッドホンをつけるだけだった。
「キャプテン、これ何も聞こえないよ?」
「待ってろ、今聴音機を下ろす」
説明書を見ながら、ローは機械を操作した。
「ネモ博士の考案したシステムは理論的には瑕疵がねぇ。聴音できる優秀なソナーさえいれば運用が可能なはずだ」
「……ネモ博士って?」
「ああ……北の海の優秀な科学者で設計士だ。冒険家でもあり、晩年に自分の最後の船としてこの潜水艇を作った。妻と世界を一周するつもりだったらしいが、その前に妻が病床に倒れて、このポーラータングは未完成のままドッグに放置されてたんだ」
「それをキャプテンがもらったの?」
「……まあ、結果的にはそうだな」
「……?」
小首を傾げるにベポは「大変だったんだよー」と疲れをにじませた声で言う。
続きを引き取ってペンギンが説明した。
「潜水艦を狙って、ある海賊団がネモ博士の家を襲ったんだ。病床の奥さんを誘拐して、未完成の潜水艦を完成させろと博士に迫った」
「えー、ひどい……」
だろ、とシャチが応じる。