第8章 セブタン島
朝起きたら隣にがいて、可愛いとか幸せだと思った当たり前のことが、には当たり前じゃないのだ。見えない彼女の世界を想像して、なるべく彼女の立場になろうと普段から気をつけているのに、いくら舞い上がっているからってこれはあまりにひどい。
「ここキャプテンと泊まったホテルだよね?」
「ああ」
「よかった。まだ慣れないところだと怖いの。……全部夢で、起きたらラウザーの船だったらどうしようって思っちゃう」
抱き寄せながら、「普段はどうしてるんだ?」とローは尋ねた。
「ええとね、もこもこクッション抱いて寝るの。目が覚めてもこもこがあったら、ラウザーの船じゃなくて、キャプテンやベポのいるハートの海賊団の船だってわかる」
(俺はもこもこクッション以下か……)
地味にショックを受けて、ローは落ち込んだ。
「キャプテン? どうして落ち込んでるの?」
は狼狽して、自分を抱きしめるローの頭を恐る恐る撫でる。
「……どうしたらいい? に他の誰かと誤解されるのは嫌だ。何か付けたらいいか?」
「何かって?」
「アクセサリーとか、香水とか。がすぐ判別できるものをずっと付けてたら混同は避けられるだろ」
「ずっと? ずっとって一日中?」
「ああ」
「毎日?」
「もちろん」
目が見えていた頃の名残なのか、は目を瞬いた。
「どうして?」
首を傾げられ、ローはガックリとうなだれた。
「……言わなきゃわからないか?」
ならお望み通りにと耳元でささやくと、ゆっくりと、の白い頬はバラ色に染まった。
(可愛いな……)
大事にされ慣れていないのか、はたまに変なところがあるが、こういう反応も可愛い。
抱き寄せてキスしながら「後で一緒に買い物に行こう」とローはささやいた。ぎゅっと抱きつき返しながら、は「今は?」と尋ね返す。