第8章 セブタン島
やけに落ち着きのないの髪を撫でながら、「ひょっとして緊張してるのか?」とローは尋ねた。
「……実はそう。私に触ってもキャプテン、嫌にならない? 思い出すのも嫌なこと、いっぱい、いろんな海賊にされたの。普通の女の子とは違うから――」
「は普通の女の子だよ」
遮り、きつくを抱きしめて、ローは言い聞かせた。
「嫌になったりする訳ないだろ。誰に何をされたかなんて関係ない。俺にとっては、一番大事で、可愛い、普通の女の子だ。辛い目にあっても自暴自棄にならずに、生きててくれてうれしい。俺と出会ってくれて、感謝してる」
「うん……」
泣きながら、は包帯の巻かれた両手をローの背中に回してすがりついた。
「私もキャプテンが生きててくれて嬉しい。出会ってくれて……ありがとう」
お互い、どこかで一つでも何かが違っていたら、死んでてもおかしくない人生だった。それを全部乗り越えて、出会って、こうしていることはまるで奇跡だ。
それに気づいたらお互いに相手を求めずにいられなかった。触れ合ってキスしあって、生きていることを肌で感じたくて。
「キャプテン好き。大好き……」
(ああ、可愛いな……)
抱き合うと、生きててよかったと思えた。モアとコラさんがどんな関係だろうと関係ない。
命をくれた彼に感謝して、やるべきことを果たす。それだけでいい。
「……キャプテン、元気出た?」
「頭の整理はついた。元気は……まだだな」
だからもう一回とせがむと「元気だよね!?」とツッコまれた。
「するのもいいけど……プールに行こうよ」
「後で」
「えー……」
「が足りない。全然足りない」
「いっぱいしたのに!?」
「だめか? ……じゃあ水着なんか着れないように痕つけちまおう」
「だ、だめだめ!」
「こら逃げんな」
ベッドの上でじゃれ合って、怒るのも可愛くて、好きで好きで仕方なくて――。
この時は、を失うことになるなんて夢にも思っていなかった。