第2章 グランドライン
「……あらやだ。キャプテンかと思ったらただの目つきの悪いチンピラだわ」
尻もちをついたまま、ペンギンは精一杯、に心配させないように明るい声を出した。
それに対するキャプテンの反応は冷たい。
「刻もうか?」
「いやー! こんなチンピラとは恋に落ちもしないわ!」
「……ペンギン、うちの船は恋愛禁止だよ?」
「それだけはありえねぇから心配すんな。無駄だ」
「ちょちょちょキャプテン? 割と本気で苦しいですよ? 絞まってる絞まってる!」
胸ぐら掴まれ哀れなペンギンは船の中へと引きずられていった。
二人きりになって、ふとは尋ねる。
「……ベポはどうして喋るの?」
「えー! どうしてって言われても……」
「ベポは特別なクマなの?」
「別に俺、特別じゃないよ……それより、ちょっとだけ貸してくれない? 俺もキャプテンの頭の毛皮かぶってみたい」
んーとは悩み、「だめ」と結論した。
「ちょっとだけ! ちょっとだけだから」
「だめ」
「俺の毛皮貸すから!」
「無理でしょ」
「俺もかぶってみたいんだよー! アイアイ!」
「だめ。私が貸してもらったの」
「お願いだよー!」
ベポがまとわりつくので、の罰掃除はなかなか終わらなかった。
◇◆◇
「寒い寒い、風邪引いちゃうよ!」
後ろから自分の毛皮でを抱きしめながら、騒がしくベポが暖かいブリッジへ入ってきた。
「ずいぶんかかったな」
「がキャプテンの帽子貸してくれないから」
「ベポは自前があるだろ」
呆れて言って、ローは自分のアイデンティティを取り返した。
「ほら、交換だ。熱いから気をつけろよ」
指先を真っ赤にしているに湯気の立つカップを手渡すと、「ココアだ」とは嬉しそうな声を上げる。
「よく頑張ったな」
「……私、罰掃除で労われたの初めて」
(う……)
甘い自覚はあったが本人に指摘されるとさすがにバツが悪い。確かにもう少し厳しくするべきかもしれないが――。
「キャプテン、ココアありがとう」
はにかんで笑うを見てローは諦めた。無理だ。