第8章 セブタン島
ローの世界がこの先何度壊れても、は一生懸命それを修復しようとしてくれる。幸せになれるように、時に泣きながら怒って、時に心配そうにぬいぐるみでこすって、どんなにつたなくて不器用でも、最後には笑ってしまいそうになるから。
(コラさんの無念は忘れてない。やらなきゃいけないこともわかってる。……でもと一緒にいたい。その気持はもう、どうしようもないんだ)
ひどい罪悪感があった。彼は永遠にその機会を失ったのに、幸せになることを許してくれと言っているような気がして。
ローが想像する都合のいい恩人は、ショックな顔で立ち尽くしている。今まで何回、こうやって彼を言い訳に使ってきたんだろう。
自分が恨みや怒りを忘れないために、彼にはそれしか救いがないのだと思い込もうとしていた。
『やったな、ロー! 赤飯炊くか!?』
『早いってコラさん。まだに告白してもいないのに』
本当の彼はきっと喜んでくれる。自分のことのように。
『でも……好きだって言わないでほしいって言われたんだ』
『大丈夫。人を愛する大切さを知ってる女の子で、生きて、一緒にいるんだろう? ならいずれ必ず、気持ちを伝えるチャンスは来るから』
『うん……』
破顔する彼の顔が浮かんで、胸が痛くて仕方なかった。
『ローに好きな子ができるとはなぁ! クソ生意気で可愛げのないガキだったのに。相手は天使みたいな子か?』
『……顔は天使な爆弾魔って感じだよ』
『ああ……なんかすげーローが好きになる女の子って感じがするな』
お似合いってことのはずなのに、あんまりうれしくない言い方だった。
『コラさんは? 好きな女の子いたの?』
想像上の彼は笑って答えない。知らないから当然だった。
(もう何も知るすべがない……)
思えば彼のことを自分は何も知らない。ウソに気づいていながら、問いただすのも嫌だったから。
悲しいのか、それとも知らずにいたほうが良かったのか、それすらわからなかった。
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