第8章 セブタン島
(ヒューマンショップに行かねぇと……)
自称ドフラミンゴファミリーのチンピラと揉めた件もあるし、今後のためにも様子を見に行くべきだ。でもから離れたくない。独り占めして、抱きしめて、キスしたい。ふくらんでいくばかりの気持ちを持て余して、どうしようもなかった。
もう一度深いため息をついて、ローは立ち上がった。
「行きたくねぇが、行ってくる。は中でおとなしくしてろよ。しっかり鍵かけて、うちの人間以外は誰が来ようと開けるな」
「うん。……あ、お弁当いる? おにぎり作ろうか?」
「そんな楽しい外出じゃない。……だから帰ってから食べる」
と楽しい軽食が待ってると思って頑張ろう。お供にミニベポを連れて行かせようとするの頭にぬいぐるみを載せて、ローは船をあとにした。
◇◆◇
ヒューマンショップへ行く道すがら、ローはため息をこらえきれなかった。
(帰りたい……)
どう考えたってドンキホーテファミリーの運営するヒューマンショップを敵情視察するより、とおにぎりパーティしたほうが楽しいに決まってる。
(仕事だ仕事。さっさと終わらせて帰ろう)
なあ、なんか最近俺のこと忘れてない?とでかい図体して涙もろくて繊細な男が頭の中でびくびくとうかがっている気配がする。
(別にコラさんのことを忘れたわけじゃ……)
ない、と言うと頭の中の恩人はほっと胸をなでおろす。本音は言えなかった。と一緒にいるほうが楽しいなんて。
彼のことを思い出すと温かい気持ちになるのと同時にいつも悲しくて寂しくて辛い。
あの頃、ローにとって彼は世界の全てだった。それを殺されることは世界の破壊に等しく、何もかもがドフラミンゴに奪われたような気がした。
でも、世界が壊されたような気がしても、日はまた昇った。
ベポやペンギン、シャチと出会い、海に出て、いつの間にか新しい世界がまたできて。
(ごめん、コラさん。ごめん。……好きな女の子ができたんだ)
俺よりずっと辛い目にあって、でも怒るのも憎むのも疲れるとばかりに楽しいことを探す女の子。
一緒にいるとすごく楽しい。笑ってくれるととても嬉しい。