第8章 セブタン島
「助けて!」
「大丈夫、ブタさんになってもベポのこと大好きだよ」
「俺はシロクマでいたいの!」
「シロ……クマ……?」
たぷんたぷんのお腹を撫でて、は首を傾げた。
「今のベポはシロクマじゃないと思うよ?」
「この辺がロース、この辺がバラ肉だな。バーベキュー好きだろ、」
「うん。……でもベポは食べたくないよ?」
「ベポを痩せさせたいだろ」
「それはもちろん」
「待って待って! それ痩せる話じゃないよね!?」
なんとか話をそらさせて、ローはベポとのお風呂を阻止した。
57.ヒューマンショップ
「キャプテンまだ出かけないの?」
一人で風呂に入って髪を拭きながら出てきたは、甲板で刀の手入れをするローに話しかけた。ベポはバリカンで襲われるのを恐れて、船の奥に引っ込んで出てこない。
「船長を追い出したいって?」
「違うよー。だってなんだかずっと、出かけたそうにしてたから」
隣に座って、はお気に入りのぬいぐるみの手をぴょこぴょこ動かす。
「ちゃんとお留守番してるから、好きなところにお出かけしていいよ~」
「はともかく、こいつに留守番させるのは心配だな」
ドヤ顔での腕の中に収まっているぬいぐるみを、ローは指先でびしびしと弾く。は「ミニベポをいじめないで!」と船長から遠ざけた。
「キャプテンのいじめっ子」
「海賊だからな。気に入らないものに優しくするわけねぇだろ」
「もー。私には優しいのに」
ぎくりとして、まさかバレてるんだろうかとローはまじまじとの顔を見た。
「……?」
不思議そうな顔をされて、ほっとしたような残念な気持ちになる。いっそこのままキスしてばらしてしまいたいような気すらして、ローは自分自身に深々とため息をついた。
「キャプテン疲れてるの? 私が連れ回したから?」
は船長の元気が出るように、ぬいぐるみでごしごしとローをこすった。
「元気出た? ダメ?」
心配そうな顔をされて、ローはの肩にもたれかかった。