第8章 セブタン島
路地を一本入ると、治安の悪さがよりはっきりと出ていた。
そこら中にたむろする麻薬常習者。金を数える売人。盗品専門の質屋。そしていたるところに貼られた、ドフラミンゴファミリーのステッカー。
街にそぐわず、ひと目でよそ者とわかるに、彼らの飢えた視線が突き刺さる。
「……ちょっと待てよ。誰の許可得てこの道通ってんだ? ここはドンキホーテファミリーのシマだぜ」
ナイフをちらつかせて、チンピラは二人の行く手を阻んだ。
「通行料でも取ろうってのか? ただ通り抜けたいだけだ」
怯えるをかばいながら、ローはなるべく穏便に済ませようとした。トラブルを避けようとして、逆にまずい事態になったかもしれない。彼らはドンキホーテファミリーのバッジを身に着けていた。
「金がないなら女を置いてけ。それでてめぇは見逃してやる」
「やめて……っ」
背後から忍び寄ってきた男に乱暴に腕を掴まれてが悲鳴を上げる。カッとなってローは男たちを能力で切り刻んだ。
「てめぇ、俺達が誰かわかってんのか!? 七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴに楯突く気か!!」
「知るか」
怒りに任せて、ローは辺り一帯ごとチンピラたちをみんな切り刻んだ。
◇◆◇
「大丈夫かな……?」
船へと戻る道すがら、は不安そうにローがバラバラにした一帯を振り返った。振り返ったところでには見えないが、どうしても気になってしまうようだ。
「まあ、やっちまったもんは仕方ない」
リーダー格の心臓を弄びながら、ローは存外にきっぱりと言い切った。
喋ったら心臓がどうなるかはわかってるよな?と脅しておいたので、きっと口をつぐんでくれるだろう。もっといい方法があればよかったが、に手を出されて黙っている選択肢はなかったのでやむを得ない。
自分だと知られれば厄介だが、通りがかりのカップルをボコろうとしてやり返されたなんて報告を受けたところで、ドフラミンゴも幹部も出張ってきたりはしないだろう。