第8章 セブタン島
「なあに? キャプテン楽しそう」
何か面白い光景があるの?とはローにまとわりついた。
「芸人さんでもいる?」
「いいや」
「意地悪しないで教えて」
「してない。何もないって」
「じゃあどうしてキャプテンそんなに楽しそうなの?」
「さあ、どうしてだろうな。の気のせいかも」
「そんなことないよー!」
は両手を伸ばしてローの顔に触れ、「ほら、やっぱりすごく楽しそうな顔してる」と笑った。
から帽子を取り返し、顔を隠してローは「教えない」と含み笑いする。
「ヒーヒヒヒッ、楽しそうなことだねぇ。ずいぶんと仲のいい恋人同士じゃないか」
無粋で不気味な老婆の声に、びくっとは怯え、ローは彼女をかばった。
「何の用だ」
「おやおや嫌われたものだねぇ。せっかくいいことを教えてやろうと思ったのに」
薬師アルゴールはしわがれた指を伸ばして忠告した。
「この先の道で薬に溺れた馬鹿者たちが、可愛い娘をさらってヒューマンショップに売っぱらおうと狙っているよ。恋人を守りたければ気を付けるんだね」
「……恋人じゃない」
を後ろにかばいながらローは憮然と言ったものの、忠告はありがたく聞き入れた。
「道を変えよう。こっちだ」
不安そうにするの手を引き、ローは一本奥の路地に入る。
ただのゴロツキなら何人来ようと川に放り込む自信があるが、に怖い思いはさせたくないし、不測の事態が起きないとも限らない。