第8章 セブタン島
「う! ごめんね」
もう生臭い川に放り込まれたくないベポは、を見捨てて船長の後ろに回った。
唯一の味方に見捨てられ、はわなわなと震える。じりじりと甲板の隅に追い詰めながら、死の外科医は凶悪に笑った。
「言ったろ、じゃ敵は倒せないって」
船内へ続く壁に手を付いて、意地悪くローはを追い詰める。
「取って食っちまうかな」
が危機感を持つように、あえて悪役ぶって言ってみる――というのは建前で、内心楽しくて仕方なかった。
「あ……アイアイ!」
は最後の抵抗とばかりにベポに仕込まれたへなちょこの蹴りを炸裂させるも、ローはあっさりとの足を捕まえ、そのまま引っ張った。
「わ、わ……!」
片足になってバランスを崩したの下に、能力でベポを敷き(ぐぇとシロクマは予期せぬ衝撃にうめいた)、ローは今度こそを捕まえた。
「さて、どうやって食っちまうかな。どこも柔らかくてうまそうだ」
耳元でささやいて息を吹きかけるとは真っ赤になって、「……きらい」と絞り出すように言い放った。
「キャプテン嫌い!」
「え――」
「ベポも嫌い!」
「えー!!」
予想外の反撃にローもベポも大慌てになって謝る。
「悪かったって。悪ふざけが過ぎた」
「ごめんよー! 見捨てた訳じゃないんだよ」
「知らない!」
胸を押さえて、は真っ赤なままだ。
「甘い物食べに行くか? 好きなだけ食べていいから取り消せ」
「いや」
「ごめんよー! お願いだから嫌いだなんて言わないで」
「い、いや」
「わかった、何でもする。何でも言うこと聞くから」
「……何でも?」
倒すまでもなく、最後はの圧勝だった。