第8章 セブタン島
「例えば、こんな風に手を掴まれて、どこかに連れ込まれそうになったとするだろ」
「うん」
ベポの肉球のついた手に手首を掴まれ、は不思議そうにうなずく。
「掴んできた相手の手を反対の手で掴んで、掴まれた手も一緒にぐるっと回す」
の手を誘導しながら説明すると、暴漢役のベポがこてっと転んだ。
「え? あれ?」
「手が外れただろ。その隙にはダッシュして、逃げる」
「おー!」
「ほら、もう一回」
今度は自分でやってみろ、とローが離れると、やっぱりベポはこてっと転んだ。
「いてっ」
「すごいすごい! どうなってるの?」
「護身術の一種だ。力の弱いでもできるだろ」
「うんっ。ベポ、もう一回掴んで!」
「あんまり痛くしないでね」
面白がって何度もベポを転がし、は大はしゃぎした。
「逃げるまでが一連だからな。過信するなよ。隙を作るための護身術なんだからな」
わかってるとばかりには何度も頷き、「キャプテンも掴んで」とおぼえた技を試したくて仕方ない様子だ。
「俺を転がしたいって?」
望み通りにの手を掴んだものの、ローはに転がされる前に能力で位置を入れ替えた。
「あ、あれ……?」
なぜかぺたんと転がされて、は何が起こったかわからず困惑した。
「俺を転がそうなんて10年早い」
くつくつと笑って、ローはまだ困惑を続けるを助け起こす。
起き上がるとはゆっくりと怒り顔になって、「もー!」と怒った。
「キャプテン私の位置入れ替えたでしょ! それ混乱するからやめてって言ったのに!」
「さあ、覚えてない」
「ずるいよ、能力使うなんて!」
「ずるくない。自分が使えるもの使うのは当たり前だろ。俺が自然系<ロギア>の能力者だったら、こんなもんじゃなかったぞ。護身術って言っても万能じゃないんだ。いい教訓になっただろ」
むーとは口をとがらせた。
「……キャプテン、大人げない」
「そんな良識あったら海賊なんてやってない」
「開き直った!」
衝撃を受けてはベポに駆け寄ると、「くらえベポパンチ!」とベポの手をローに向かって突き出させる。
「また川に放り込まれたいって?」