第2章 グランドライン
「ベポ……」
は小首を傾げ、言い聞かせるように教えた。
「クマは喋らないよ?」
ガガガガーン。ものすごいショックを受けてベポは膝をつき、うなだれた。
「す、すみません……」
「打たれ弱!」
「そこで負けてどうすんだ」
見てるだけの二人は無責任な野次を飛ばす。
うなだれるベポをごそごそと触って、は何かを探し始めた。
「何してるの、」
「チャックを探してるの」
「着ぐるみじゃないって!」
無責任な笑い声が上から降ってくる中、ベポは「のエッチ!」と逃亡した。
今度はがショックを受けて、ありえないことを言われたとばかりに反論する。
「ベポ……クマは服も着ないんだよ?」
もっともだとばかりに上甲板の二人は爆笑した。ベポはうなだれ「すいません……」と謝るほかなかった。ベポじゃなくても謝ってしまう心理はなんとなく理解できた。
よしよしと落ち込むベポを慰めて、は可愛らしくお願いする。
「ねぇベポ、ちょっと毛皮脱いで貸して?」
「無理だってばー!」
「えー……ベポの意地悪」
「そーだそーだ、意地悪しないで貸してやれベポ」
「減るもんじゃねぇだろう」
「えー! 減るよ!」
「ちゃんと洗って返すから」
「貸してあげたくても無理なんだってー! アイアイ!!」
口では勝てないのでベポはを抱きしめてぎゅうぎゅうと頬ずりする。
「なあに?」
「ガルチュー。よく覚えてないけど、故郷のあいさつなんだ」
「ガルチューっ」
もこもこの毛皮の感触が気持ちよくて、もベポに頬ずりした。このあいつさつはすごくいい。
かわいいなぁ、と呟くペンギンを心配して、船長は楽しそうにしているに無粋な忠告をした。
「……それ、ベポ限定だからな。ほかのやつにしたらセクハラだ」
「セクハラ! 私それ、この前シャチにした気がするわ……」
「あれはどっちかというとされたんだろ……」
ちなみにこの場にいないそのセクハラ野郎は現在、トイレ掃除に励んでいる。