第8章 セブタン島
ぎゃーぎゃー騒ぐ二人に、船長は顔をしかめて「困る」と言い放った。
「こんなでかい動物をさばく道具は持ってきてない。せめて解体して行ってくれ」
「キャプテンキャプテン、道具があっても俺は生きた人間さばくのは嫌ですよ」
ペンギンが一応念の為、冗談を言ってる顔に見えない船長に言い募る。
「仕方ない。なら非常食に手を出すか」
「俺を見ないでよ、キャプテン!」
「ベポはダメ、ベポはダメ!」
見なさい、とロッティはツバメに迫った。
「あなたが使えないせいで、いたいけなシロクマが製肉の危機よ」
「いやどう考えてもあなたが人の所のバーベキュー食い尽くしたせいでしょ」
ため息をついて、「ちょっとここに居て下さい」とツバメは店のあるビーチの中心へと走った。そして大量の肉と酒を買い込んで戻ってくる。
「あなたまさか人の道に外れた行いを……ダメよ! どんなに恩を返したくても、盗んだ食べ物を恩人がおいしく食べられると思う!?」
ツバメが悪の道に走ったと決めつけて、ロッティは感動的に更正させようとしたが、
「どうでもいい」
さっさと酒に伸ばして栓を開け、「店主が取り返しにくる前に焼いちまえ」と船長はペンギンを急かした。
「……よく覚えておきなさい、ツバメ君。世の中には2種類の恩人がいるの。悪事の匂いがする食べ物には手を出さない恩人と、悪事の匂いがするからさっさと食べてしまおうとする恩人よ」
(コラさんはどっちかな……)
ちょっと考え、あのドジっ子はそもそも悪事の匂いなんて気づかないだろうという結論にいたった。
もしくは悪事の匂いに気づいて食べまいとするものの、何かでど忘れして完食した後に「ドジッた!」と言い出すかだ。
「ねぇ、キャプテン。悪事の匂いってどんな匂い?」
ペンギンが焼いてくれた新しい肉の匂いをかぎながら、が首を傾げる。
「にわからない匂いが俺にわかるわけないだろ。悪事の匂いがするか?」
「ううん。お肉のいい匂いしかしない」
「じゃあ安心だね!」
からお墨付きが出て、ベポが肉を頬張る。都合よくダイエットを忘れるシロクマもいい加減、肉にするべきかもしれない。