第8章 セブタン島
「ベポ、追加で何か獲ってこい」
ため息をこらえつつ、ローはシャチとマリオンも行かせた。美女のためなので、珍しくシャチとマリオンも不平を言わずに海に走る。
「ごめんなさいね。連れが見つかったら、ちゃんとお金は払うから。私はロッティ。ロウと呼んで」
「ロウ?」
耳慣れた響きに、ハートの海賊団のクルーたちの視線は自然と船長に集まった。
「どうしたの?」
「キャプテンの名前もローって言うの」
おそろいだね、とは笑う。
「そうなの? ローだなんて、まるでどこかの海賊みたい」
あはは、と思い当たるフシのある海賊たちは乾いた笑みを浮かべた。当の船長はしれっとしてビールを飲んでいる。
「トラファルガー・ローは悪名高い海賊よ。拷問好きで知られるあの鎖鞭のシェレンベルクを拷問して、クルーごと船に火をつけたって言うんだから。あなたたちも気をつけてね」
キャプテンを悪く言わないで!と今にも爆発してしまいそうなの手を指先で叩き、ローはトンツーで『好きに言わせとけ』と伝えた。あまり他人に興味のない船長は、誰に何を言われようとまったく気にしていなかった。
むー、と喉の奥で不満そうな声を上げ、自分も海に行こうとしたは足元の鳥かごにつまずいた。
「このカゴは何? お財布は持ってないのに、これはトイレに持って行ったの?」
は物珍しそうに美女の鳥かごに触る。
「どこにでも持っていくの。花が咲く瞬間を見逃したくなくて」
「これってサボテンでしょ? 花が咲くの?」
中を覗き込み、不思議そうにウニが尋ねた。
「ええ、小さくてかわいい花が咲くのよ。……これは人にもらったの。5年に一度だけ咲く品種なのだけれど、もう10年以上咲いていなくて」
「どうしてカゴに入ってるの?」
「鉢植えをそのまま置いておいたら船が揺れたときに倒れちゃうでしょ? 吊るしておけば平気だから。……でも潮風はあまりよくなかったかもしれないわ」
言って美女は潮風からサボテンを守ろうと、大切そうにカゴを抱え込んだ。