第8章 セブタン島
楽しそうにあーんを繰り返している船長に、ペンギンは風紀委員長のように怒った。
シャチとマリオンもにあーんをするべく肉を狙うが、あと一歩のところで船長の能力にかっさらわれていく。
「、これも美味しいよ」
初めてのバーベキューに感激してハイテンションのウニが、甘く焼けたとうもろこしを食べさせた。
「おいしい。バーベキューって楽しいね!」
「そうだな。ほら、次はエビだ」
「んー!」
明らかに違う楽しみ方をしている船長を注意したいが、クルーたちがおかわりを要求するので新しい食材を載せたりひっくり返すのに忙しく、ペンギンは諦めた。
53.ロッティ
「あら、いい匂い。美味しそうね」
バーベキュー中のハートの海賊団に声を掛けてきたのは妙齢の水着姿の美女だった。ウェーブのかかった亜麻色の髪が美しい20代後半くらいで、なぜかビーチなのに鳥かごを抱えている。しかも中に入っているのは鳥ではなく、鉢植えのサボテンだった。
貴族然とした上品な女は、バーベキューを楽しむハートの海賊団のクルーたちをニコニコと見つめる。その雰囲気とは裏腹に、大太鼓みたいな豪快な腹の音が鳴っていた。
「お腹すいてるの?」
すでに同情している雰囲気で、が心配して声をかける。飢えて鳴く子猫に遭遇してしまったような顔になっている。
「……実はそうなの。トイレに行ったら迷って戻れなくなっちゃって。かれこれ3時間」
「3時間!?」
致命的な方向音痴だった。
「お財布も持ってこなかったから何も食べられなくて……」
はらはらと女は上品に泣いた。詐欺師なら実に見事なウソ泣きだった。
「そんな、可哀想に。いくらでも食べて行って」
網奉行のペンギンがよく焼けた食材を皿に載せて女に差し出した。
「ありがとう」
たおやかな雰囲気でありながら、女はハートの海賊団の食材をほぼ全て食べ尽くした。