第8章 セブタン島
「毛皮は一回濡れるとなかなか乾かないんだよー!」
「毛皮じゃなくても川に何回も放り込まれたら乾かないよな」
同じくまだ濡れているシャチとマリオンが、恨みがましく主張する。
「お前らは自業自得だろ。次またにセクハラしたら、海に放り込んで置いていくからな」
「えー! キャプテンは!?」
「一番セクハラしたの自分でしょ!」
二人はぎゃーぎゃーとうるさく船長にまとわりついた。
「だからお前らが海に放り込むんだろ」
「あれ、放り込まれる真似をした自覚あったんですか?」
ウニを連れてニヤニヤと指摘するペンギンにローは答えず、代わりに宣戦布告した。
「まあ、黙って放り込まれるつもりはねぇからせいぜい頑張るんだな」
「その言葉覚えてなさいよ!」
「一人だけいい思いしたやつを許しておけるかー!」
自分のせいかとおろおろするに、こっそりベポがささやく。
「キャプテンが海に放り込まれても、俺たちは助けに行こうね」
「うん」
を安心させようと、ベポは続けて言った。
「大丈夫だよ。キャプテンが溺れても、がちゅーすれば息を吹き返すから!」
愛刀を道の段差に引っ掛けて、危うく船長は大ゴケするところだった。
「ちょっと待て、何の話だ!?」
「ホワイトガーデンで船長さんが死にかけとき、が何度もキスしたの……知らなかったの?」
不思議そうにウニが言うので、ローは意図的にそこを省いて島でのことを説明したペンギンを睨みつけた。
「ただの人工呼吸でしょ。キスじゃないって」
飄々とペンギンは言い放つ。
「うん、あれはただの人命救助。キスじゃない」
「断固としてキスだなんて認めない」
仕返しとばかりにマリオンとシャチは言い募る。
「俺が溺れてもちゃんは人工呼吸してくれるよね!?」
「う、うん?」
マリオンの気迫に押されて、は頷いてしまった。
それには及ばない、と船医を兼任する船長は宣言した。
「お前らが溺れたら俺が責任持ってオペして切り刻んで埋めてやる」
「助ける気ないでしょそれ!」