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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第8章 セブタン島



「げ。まずい、海軍がいる」

 双眼鏡をのぞいていたシャチが心底嫌な声を上げた。

「えー! ビーチは!?」

 すでに水着姿で浮き輪を抱えていたマリオンが悲鳴をあげる。
 船長は的確に指示を出した。

「ひとまず延期だ。向こうに見つかる前に一旦潜るぞ」


◇◆◇


 船を停められる場所を探して、ポーラータングは島をぐるりと回り、島の反対側から大きな河口に入った。

「なんか、正面から見た時はキレイな建物の並ぶリゾートって感じだったのに、こっちはずいぶん雰囲気が違いますね……」

 水深が浅くて潜っていられないので、浮上した甲板から周囲を見回し、ペンギンは顔を引きつらせた。

 川に柱を突き立てる形で、両岸のギリギリに木造の建物がぎっしりと建ち並んでいる。ほとんどの建物が色あせ、朽ちる寸前で、建物を支える柱も多くが今にもへし折れてしまいそうだった。
 その一方で人口は多く、そこかしこに数人の幼子を抱えた母親たちや、仕事がないのか道端で賭け事にいそしんでいる男たちがいた。友好的とは言えない目で彼らはハートの海賊団の潜水艇を見つめ、突き刺さるような視線が痛い。

「略奪かい? それとも侵略かい?」

 川に作られた洗濯場の上に立っていたのは、杖をついた小柄な老婆だった。黒衣をまとい、腰の曲がった姿はまさしく魔女の呼び名がしっくりくる。

「どちらでも無意味さね。奪えるものなどこの街にはないし、侵略したところで得るものもない。ヒューマンショップならあるがね。口減らしのために親が子供を売る店さ。欲しいのは赤ん坊かい? それとも若い娘? ああ、いい値段で売れそうな娘を連れてるね。リゾートにいる貴族たちが喜びそうだ」

 老婆の声にびくっとして、はベポに抱きついた。ふかふかの腕で抱きしめて、ベポはキッと老婆を睨みつける。

「を売ったりしないよ!」
「そうかいそうかい、なら人攫いに気をつけな。このセブタン島では盗めるものは何でも盗むし、売れるものはなんでも売るからね。人間だって例外じゃないよ。ヒーヒヒヒッ」

 ハートの海賊団のクルーたちは一様に、をかばって前に出た。その先頭に船長は立ち、鞘に入った愛刀を勢いよく甲板に突き立てる。

「うちのクルーに手を出してみろ。どこの誰だろうが島ごとバラすぞ」
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