第8章 セブタン島
48.セブタン島
(コラさんって、恋人とかいたのかな……)
ドフラミンゴファミリーにいる間、彼にそんな素振りはなかったが本当のところはどうだったのだろうと、ローは甲板で海を見ながら考え込んだ。
もし居たのなら、恋人を残して死ぬのはどんな気分だったんだろう。置いていかれた彼女はそれを知った時、何を思ったんだろう。最近そんなことばかり、考える。
「キャプテン、島だよ!」
見張りに立っていたベポが、水平線からのぞいた目的地を指さして叫んだ。このところ気候が安定してしたから、次の島が近いのはみんな予感していた。
島が近づくほど鮮明になる美しいエメラルドグリーンの海と、白い砂浜に、ハートの海賊団のクルーたちは歓声を上げた。
「やったー! リゾートだ!」
「ついに来たぞ、バカンスのターンが!」
「、水着が着れるよー! 泳ぐの競争しようね!」
「うんっ」
楽しそうに返事をして、はハッとして泳げない船長のことを思い出した。
「キャプテンを仲間外れにしようなんて思ってないよ!」
「……別に俺に気を遣わなくていい」
病気を治すために食べた果実のせいでどうやっても泳ぐことのできないローは、低い声で言った。
「ウニにも泳ぎ方教えてあげるね」
「本当? みたいに泳げるようになるかな」
「絶対なれるよ」
生まれてからずっと地下で引きこもり生活を続けていた少年は、見るものすべてが新鮮で顔を輝かせている。同じく子供の頃から海賊の奴隷だったとは、ずいぶん気が合うようだ。
(早くどうにかしねぇと……)
自分の気持ちを持て余して、ローはため息をこらえた。を独占したくて仕方ない。その感情に振り回されて冷静な判断力を失っている自覚があった。
たわいない会話をするクルーにまで嫉妬するなんて、どうかしている。
「キャプテンまだ具合悪い? 呼吸が変だよ?」
恐ろしいぐらいの勘の良さを発揮したから、ローはそれとなく距離をとった。
「なんでもない」
が握ろうとした手に鬼哭を持ち直して、ローはベポに上陸の指示をする名目でその場を離れる。
後ろめたくての顔が見れなかった。