第7章 吸血ネズミ
(可愛いな……)
が欲しくて、全部自分のものにしたくて、どうにかなりそうだった。
「ロー、好き。大好き」
「……ベポは?」
意地悪く聞き返すと、は不思議そうな顔をした。
「どうしてベポが出てくるの?」
「同じ好きじゃ嫌だと思って」
キスしながら笑って言うと、はちょっと考え込む様子を見せた。
「ええとね、ベポはぎゅってするとお日さまの匂いがするの。毛皮はふわふわで、もこもこで、撫でると気持ちいいの。でもキャプテン……じゃなくてローに抱きつくと、ドキドキする。もっと触って欲しいなって思う。同じ好きじゃないと思うんだけど、どうかな?」
一生懸命説明したに充分だと答えて、いっそう激しくローは腰を振った。ぎしぎしとベッドが揺れて、船まで本当に揺れてしまいそうだった。
「愛してる……」
愛しさがあふれて言葉が溢れた瞬間、ローは現実に引き戻された。
――ロー。愛してるぜ!!
雪の降る、寒い日だった。宝箱の中の空気も凍えるようで、息は白く、薄い板一枚隔てた向こうに大好きな人がいるのに――彼が殺されるその瞬間も、何もできなくて。
「違う……」
「……?」
動きを止めたローに、は不思議そうな、それでいて少し不安な顔をする。
だけど彼女を気遣う余裕もなく、ローはから離れるとひどい吐き気に口を覆った。
(俺だけ一人、コラさんの犠牲を忘れて幸せになりたいなんて思ってない……!!)
音が消える悲しみと悔しさ。叫び声も、宝箱を殴る音も、彼の優しさと強い意思に全部かき消された。
彼が息絶える、その時まで。
「ロー……?」