第7章 吸血ネズミ
優しいの手が、心配そうに情事を相手を探してローに触れた。振り払えず、でも声を殺して泣きながら、ローは首を振った。それではに伝わらないのはわかっているのに、声を出せば嗚咽が漏れてしまいそうで。
(俺にに触れる資格なんかない……)
命をもらった。なのに彼の無念を忘れるような恩知らずになんてなれない。
ドフラミンゴを討つその時まで、誰かを愛する資格すら自分にはないのだ。
ベッドに座ってに背を向けるローを後ろから抱きしめて、彼女は「自分を責めなくていいんだよ」と優しく言い聞かせた。
「だってこれは、全部夢なんだから」
◇◆◇
ローが自室のベッドで目を覚ますと、腕に噛み付いていた白いネズミが「やべ」という顔で固まっていた。
「チッチー」
人間語に訳すなら「えへ」と言わんばかりに鳴いて逃げ出そうとしたネズミを、ローは噛まれたのと反対の手でむんずと掴み上げた。――握りつぶす勢いで。
「チューチューチュー!!!」
この人殺し!と言わんばかりにネズミは鳴きわめく。叶うならこのまま握りつぶしてやりたかった。
(ウニの言ってたネズミか……っ!!)
ホワイトガーデンのネズミは吸血性で、特に人間の血が好物。噛まれると性欲が増進され、就寝中なら淫夢を見る。
の前で言いよどんだ特性を思い出し、ローは診察室をかねている自室のベッドから起き上がると、捕獲できるものを探し、ほとんど空の酒瓶を見つけて、能力でネズミと中身を入れ替えた。
「チューチューチュー!!」
こんなのネズミ虐待だと言いたげにネズミは中で鳴きわめいている。ボトルネックの瓶なので、ネズミは決して中から出ることはできなかった。
「黙らねぇと生きたまま内蔵を全部取り出すぞ」
人語を解したように、ピタリとネズミは鳴きやんだ。
「ああ、クソ……っ」