第2章 グランドライン
一番手っ取り早くて確実な方法だ。だが沈痛な面持ちのシャチを見て、それではダメだと考え直す。
には自分がしたことを自覚してもらわなければ。
「シャチにウソをついただろ」
「好きって言ったこと? ウソじゃないわ」
わずかな希望にシャチが顔を上げるが、
「ベポは?」
「好き」
どこまでもすれ違う思いに、がっくりと再びうなだれる。
理解できない問答の応酬に、は不安そうに訴えた。
「わからない……キャプテンどうして怒ってるの? 乱暴されるのは痛くて嫌だけど、シャチは優しかったし喜んで欲しかった。私にできる数少ないことなのに……それがいけないことだったの?」
「……理由はどうあれ、誰彼かまわず寝るならそれは奴隷の振る舞いだ。俺は俺の船に奴隷を乗せる気はない」
びくっと震えて、は今にも泣き出しそうに顔を歪めた。
それを見てシャチが「キャプテン!」と頭をこすりつける。
「今回のことは全部俺が悪いんだ! がわかってないのにも気づかず舞い上がって、結果的に付け込むような真似をした。だからを責めないでやってくれ!!」
「シャチ……」
手探りでシャチの方に向き直ったが、異変を感じて悲鳴を上げた。
「シャチ、けがしたの!?」
「ああ、いや、これは……」
勝手に殴るからだ、とローがペンギンをねめつける。まさかこんな事態になるとは思っていなかったペンギンが「確かに早計でしたよ」と言わんばかりの苦い顔をした。
「いいんだ、これぐらいの覚悟はしてた」
「私のせい? ごめんね、ごめんね……っ」
こらえきれずには泣き出してしまった。
泣かせた、と咎めるように見てくるペンギンに苛立ちながら、ローは話をまとめた。
「全員に言っておく。この船でそういう行為は一切禁止だ。連れ込みも含めて次に見つけたら問答無用で海に叩き込む」
「アイアイ、キャプテン」
全員が了承したものの、ベポが「キャプテン、連れ込みって?」とくもりなき眼で問うた。