第7章 吸血ネズミ
「この船に乗る以上はうちのクルーだ。やつに手出しはさせねぇ。……命を助けられた恩は返す」
「僕は何も……あなたを助けたのはスイレンだから」
「そいつに返すことはもうできねぇだろ。ならそいつの一番大事なもんに返す。それが筋だ」
きっぱりと言い切られ、これが海賊なのかとウニは衝撃を受けた。なんて清々しく、大きいのだろう。
この船に乗るなら自分もこうなりたい。なれるだろうかと――あまりの途方もなさに身震いがした。
(強くなりたい……次はをちゃんと守れるように)
が危険なのをわかっていて爆弾を投げるしかなかった――あんな選択は、もう嫌だ。
「それにしても本当に無茶ばっかりしやがって……」
人の気も知らずにくーくー寝息を立てているの顔を見つめて、ローは重い溜息をこぼした。
敵を倒すためとはいえ、溶岩湖まで誘い出し、爆弾を投げさせ、あやうく煮えたぎる溶岩に落ちるところだったとは。次はもっとひどいことになりそうで、船から出したくない、と切実にローは思った。
――閉じ込めたところでは窓はおろか、換気口からでさえ脱出をはかってケガすることになるんだろうが。
「あの……は船長さんの恋人なんですか?」
「あ!?」
まさかの質問にぎょっとして、思わずローはを離した。をくるんでいた毛布が落ち、寒いのか彼女は「んんー?」と不機嫌な声を上げて毛布をかぶり、抱きまくらが動くなと言わんばかりにローに再び抱きつく。
「……違う。うちはクルー同士の恋愛禁止だ」
ウニは耳に聞こえた言葉と目に見るものどっちを信じたらいいんだろうという顔をした。
船長の威厳がたもてないので、ローはなんとかを起こそうとする。
「、もう部屋に行け。ここで寝るんじゃない」
「やだ。キャプテンが死んじゃわないように見張る……」
眠いのと寝たくないののはざまで、はむずがってローにしがみついた。柔らかくて温かくて可愛い生き物に懐かれて、さすがのローも振り払えなかった。
勝ち誇ったみたいには笑って、こてんと寝落ちした。
「ああもう……」
ウニが代わってほしそうな顔をする。でもローも代わりたくないので気づかないふりをした。