第7章 吸血ネズミ
「……。僕の本当の名前、ウニって言うんだ。U-2っていうのは、人形たちとおそろいにしたくて自分で考えた。でももう、人形は一体も残ってないから――」
「――ウニ」
彼の名前を呼び、は笑った。
「ハートの海賊団へようこそ」
「お世話になります」
笑ってウニが言ったので、は扉を閉める。その瞬間、泣き伏す彼の声がの耳には届いた。
何もかも失った悲痛な泣き声をあげる彼を守りたくて、は甲板へつながる扉の前から動けなかった。
◇◆◇
「。なんでこんなところにいるんだ」
肩を叩く船長の声に、は目を開けた。
ウニの泣き声はもう聞こえない。誰も甲板に出ないように番をするうち、眠ってしまったようだった。徹夜でホワイトガーデンを走り回り、船長が心配でずっと起きていたので疲労のピークだった。
「ウニが一人になりたいって言うから……」
「……? U-2のほかにもう一人乗ってるのか?」
「ウニはU-2のことだよ」
戸惑ってローは目を細めた。
「……からかってるわけじゃねぇよな?」
「なんで?」
眠気が晴れず、目をこするを毛布でくるんで、ローは「ウニはの武器だろ」と言った。
「武器じゃないよ……キャプテン寝ぼけてるの?」
「それはだろ」
甲板につながるドアの前に座り込んで立ち上がる様子もないを見かねて、ローは毛布ごとを抱き上げた。
そのまま甲板につながる扉を開けて、を連れて外に出る。もともと風に当たりたくて起き出してきたのだ。
「――あ」
甲板では泣きはらした目をした少年――ウニが、ローに気づいてペコリと頭を下げた。