• テキストサイズ

白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第7章 吸血ネズミ


 だけど彼女はとても悲しそうな顔をした。

「スイレンのこと、本当にごめんなさい。謝って済むことじゃないけど――」
「が謝ることなんか何もない」

 彼女の言葉を封じて、U-2は言い切った。

「もちろんあの船長さんも。だって何も悪いことをしたわけじゃないだろ。病気で苦しむ人を助けるために、スイレンは立派な行いをした。……それだけだよ」

 僕と違って、とU-2は甲板の手すりを握りしめた。

「U-2……?」
「……子供の頃に、言いつけを破って地上に出たことがあると言っただろう? そのせいで発病した僕を助けるために、ナノハが犠牲になった。子供の頃から僕を世話してくれた自動人形が」

 後悔と罪悪感のにじむ告白に、はそっとU-2の手に触れる。

「大好きだったんだ。でも起きたときにはもう動かなくなってた。……スイレンの犠牲で誰かを責める権利なんか、僕にはないんだ」

 U-2の手を握り、「笑って」とはささやいた。

「笑って、U-2。だってスイレンはきっとそう望んでるよ。きっと彼女も。だから笑って。U-2が悲しい顔をしていると、私も悲しい……」

 U-2を元気づけたいのにうまく言えず、は落ち込んだ。とても船長みたいにはいかない。

(ダメだなぁ、私……)

 いけないことだとわかっているのに、命に優劣をつけるのをやめられない。
 友だちを救うために、見知らぬ海賊を爆弾で殺そうとした時からまるで変わっていなかった。大事な人を守りたいと思って他の人を犠牲にする。その人も誰かの大事な人であるのは間違いがないのに。

 ふとU-2が笑った気配に、は顔を上げた。抱きしめられ「ごめん」と謝られる。

「少しだけ、一人にしてほしい」
「うん……わかった」

 船室へ向かい、ドアを閉める前に、は「U-2」と話しかけた。

「私じゃ頼りないかもしれないけど、辛かったら言ってね。ペンギンもゴンザもいる。みんなスイレンの願いを叶えたいと思っているのは同じだから……」

 うん、とU-2は頷いた。

/ 528ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp