第6章 ホワイトガーデン
「やばいぞ、これ……っ」
「今度こそ噴火する! 船に戻れ!」
「ベポ、キャプテン担いで連れてこい!」
「アイアイ!」
駆けていくクルーを置いて、U-2はその場に残った。停止したスイレンを横たわらせ、胸で指を組ませて、いつまでもその場から動けない。
「U-2、行こう……」
しゃがみこんで彼の肩に触れ、は促した。
「うん……わかってる。スイレンの望みを叶えなきゃ」
でもU-2はいっこうにその場から立ち上がれる気配がなかった。いつかのと同じように。
U-2の手をつかみ、は強引に引っ張って駆け出した。そうでもしないと彼を連れ出すことはできないと、身を以って知っていたから。
背後でプロメテウス火山が噴火する。振り返る余裕はなかった。
「キャプテン、疲れてるところ悪いんですが、至急で一件オペをしてもらわないと――」
ベポに担がれた船長に、言いにくそうにペンギンが頼み込む。
ローはベポの背中から、に手を引かれて追いついてきた少年の痣に気づいた。
「……珀鉛病か?」
無言でU-2は頷いた。
「こんなところで同病の人間に会うとはな……」
故郷の人間は死に絶え、この病気を抱えて生きる人間はもう、自分だけだと思っていたのに。
「……ベポ、ログは?」
「ええと、大丈夫、溜まってるよ!」
「噴火の影響で津波が起きるかもしれねぇ。船を出したらすぐに潜水しろ。指示はペンギンに任せる。……俺はオペで手が離せない」
ああこういう人だと、今更ながらにその器の大きさに気付かされる。
少し不安そうにするU-2の手を、「大丈夫だよ」とは握った。
「……で? は今度はどんな無茶したんだ」
ベポによって診察室に運ばれながら、一番疲れた顔でローは問う。