第6章 ホワイトガーデン
スイレンは胸元の開いた黒いワンピースの心臓部を強く押す。丸いカバーが開いて、脈動の代わりに明滅する赤い石が姿を現した。
「これを彼に飲ませて。丹砂はあらゆる毒素を癒やす効能を持つ。珀鉛も同じ。数時間で体外に排出される」
は拳を握りしめた。
「この恩はU-2に返すよ。何があろうと彼を守る。あなたの代わりに」
「お願いする。ブラッドリーはまだ生きている。恨みと執着からU-2と……あなたを狙うはず」
「私は平気。キャプテンと……みんながいるから。U-2もだよ。約束する」
スイレンは微笑み、U-2を振り返った。
「ナノハのこと、もう気にしなくていい。彼女も私と同じ気持ちだった。ただ愛する人を助けたいと思っただけ。あなたのことを恨んでなんていない」
泣きながらU-2は首を振った。言葉が出ずに。
スイレンの手が、自らの心臓を取り出し、に差し出す。そのまま彼女は停止した――。
「ごめんなさい……っ」
嗚咽をこらえて、はスイレンの心臓を受け取り、自分の口に入れる。そしてそのまま、意識のないローの頭を持ち上げて、口移しで彼に飲ませた。
「キャプテン起きて、お願い……っ」
どうか彼女の命が無駄になることにないように、彼らは祈った。
「痣が消えてく……」
には見ることができなかったが、ベポのつぶやきでそれを知った。冷たかった体にぬくもりが戻る。脈が、呼吸が、力強く生きる意思となって彼に生命力を取り戻させる。
「……?」
目を開け、彼は機嫌の悪い声を上げた。腕を持ち上げ、の顔に触れる。
「どうしたんだ、この頬。殴られたのか」
「こんなのどうでもいいよ……っ」
船長の体を抱えて、は大泣きした。状況がわからず困惑するローに、ベポまで号泣してしがみつく。贅肉で窒息するかと思った。
「よかった……」
シャチとペンギンも鼻をすすり上げる。ゴンザは男泣きしていた。マリオンも涙をにじませ、袖で乱暴にぬぐう。
だが回復を喜ぶ間もなく、再びホワイトガーデンは大きな揺れに襲われた。