第6章 ホワイトガーデン
「……っ、あなたに私を連れて行く理由がなくても! 何をされても私はあなたついていく。キャプテンやみんなを解放してもらわなきゃいけないもの」
「……フン」
冷ややかな笑みを浮かべて、ブラッドリーはを殴り飛ばした。
「!!」
U-2がかばおうとするが、はそれを制した。
「平気。殴られるのは慣れてるわ」
「そんなことに慣れちゃダメだよ!」
以前船長にも似たようなことを言われたのを思い出し、は小さく笑った。
「笑うところじゃないよ……っ」
「大丈夫。私を殴った海賊は、みんな死ぬか破滅したの。安易に暴力を振るうやつは、結局もっと強い暴力に踏み潰される。誰だって例外じゃない」
思い当たる節でもあったのか、ブラッドリーはわずかに動揺した。もう一度を殴ろうと拳を振り上げたものの、彼女が目をそらさないので舌打ちして「さっさと来い」と目的地に向かって歩き始める。
「無茶苦茶だよ、君は……っ」
タオルを水筒の水で濡らして、U-2はの殴られた頬に当ててくれた。しかしあいにくサウナのような坑道の温度のせいで、冷やすという目的を達しているとは言い難い。
「U-2、気づいた?」
殴られたU-2の頬に触れて、は小さな声で尋ねた。力いっぱい殴られたにしては、U-2の頬もそれほど痛くはなかった。
「……あいつの手、妙な感触だった。なんか柔らかいっていうか」
うなずき、は「もう少しだよ」とささやいた。
「そうだ、何か刃物を持ってる?」
「工具用のカッターなら」
「貸してくれる?」
「いいけど……手を切らないようにね」
目の見えないに刃物を渡すのは少し心配だった。けれど彼女は「大丈夫」と微笑んでU-2からカッターを受け取り、キュロットのポケットにしまい込む。
「早く来い!」
前からブラッドリーが怒声をあげる。うなずきあって、急かすブリキ兵たちに槍で突かれないよう、二人は歩き出した。