第6章 ホワイトガーデン
(暑い……)
坑道を進むほど、中の気温は上がった。それはU-2がの意図を正確に理解してくれたことを意味していたが、目的を達する前に蒸し焼きになってしまいそうだ。
「これからもっと温度が上がる。、たくさん水を飲んで」
の手を引くU-2が、多めにもってきた水筒からに水分補給をさせた。夏島出身の彼でさえ、この温度に汗だくになっていた。
「何をモタモタしている。さっさと来い!」
前を歩くブラッドリーが怒鳴る。彼だけが唯一、この温度の中、涼しい顔をしていた。汗もかいていないどころか、熱そのものを感じていないようだ。
その様子にU-2は違和感を覚えた。が何を狙っているのかはわからないが、温度が重要な意味を持っているのは間違いなさそうだ。
「……行こう」
互いに手を取り、支え合ってとU-2は坑道の奥へと進んだ。
坑道の中を歩くブラッドリーの腰からはジャラジャラと鍵束の音がしていた。
(あれをなんとかして奪わなきゃ……)
暑さで意識が朦朧とする。時間をかけるほど不利だ。
(でも、まだ足りない……)
変化の感じられないブラッドリーの様子をうかがい、は彼の気をそらそうと考えた。
「どうして丹砂が欲しいの? 黄金がほしいなら砂金を探したほうが効率的だって」
「金に興味はない。欲しいのは不老不死だ」
まさかの答えに、U-2は気色ばんだ。
「丹砂にそんな効能はない! あったら都市の住人が滅びるわけないだろ……っ」
口ごたえをしたU-2を、ブラッドリーは殴り飛ばした。
「黙れ。お前はただ俺の命令どおりに人形を作り、従ってればいいんだ」
殴られた衝撃で尻もちをついたU-2をかばい、は見えない目でブラッドリーを睨んだ。
「なんだその反抗的な目は。お前も殴られたいか?」
の髪を掴んでブラッドリーは力ずくで引き起こした。
「案内人は一人いれば事足りる。この場で殺してもいいんだぞ」