第6章 ホワイトガーデン
「お前ら、半分残ってこいつらを見張れ。もう半分は俺と来い」
総勢100体近いブリキ兵たちが、人形遣いの言葉に従う。
「準備ができたよ。行こう」
地図を持ってU-2は促した。その目指す地図の先には、宝を示すように大きな赤い塊が描かれていた。
◇◆◇
(ちくしょう……っ)
自分の情けなさとふがいなさに、ローは憤死しそうだった。クルーを守らなければいけない立場なのに、こんなところで死にかけて這いつくばっていることしかできないなんて。
(を追わねぇと……っ)
だが気持ちとは裏腹に、体はまるで動かない。痛みと高熱で意識は朦朧とし、このままなら一日と持たないだろうとローは自分の命の限界を感じていた。
(クソ……)
死ぬ覚悟ならある。たとえ死んでも自分の思うまま生きようと決めた時に、力及ばず果てる覚悟はした。
でもこんなのは嫌だ。
(珀鉛病を治すために、命がけで助けてもらったんだろ……っ)
北の海で殺された命の恩人のことを思い出し、ローは無様に起き上がり、力の入らない手で海楼石の枷をなんとか壊そうと引っ張った。何度も何度も、ブリキ兵に棒で打たれ、枷がこすれて手が血だらけになっても。
「キャプテン……」
無意味な行為をペンギンが止めるが、ローはやめなかった。
「珀鉛病で死ぬのだけは嫌だ……っ」
大人しくならないローを打ち据えようと、ブリキ兵はひときわ大きく振りかぶった。その金属棒のような細い両腕が、背後から両断される。
「……?」
そこにいたのは大刀を構えた銀髪の少女だった。顔の半分に手ぬぐいを巻いている。クマ柄の手ぬぐいは、がベポたちを迎えに行く時に持っていったものだった。
「キャプテンー!!」
泣き出しそうな声を上げて、ベポがブリキ兵たちを蹴散らす。たるんだ腹の贅肉が、移動のたびにたぷんたぷんと揺れていた。
「無事スか!?」
獲物を手に、シャチとマリオンもブリキ兵の破壊に加わった。奇妙なことにブリキ兵たちからの反撃はほとんどなく、50体ほどいたブリキ兵たちはほどなく残らず破壊された。