第6章 ホワイトガーデン
「ちくしょう、どこに連れて行く気だ!?」
続く怒声はペンギンのもの。
声のする方へ、たちは見つからないよう気をつけながら進んだ。
洞窟の中の広い通路を、松明を持った無数の小さなブリキ兵が隊列を組んで進んでいる。彼らは大きな檻を運搬しており、その中に鎖で縛られたゴンザとペンギン、そしてローが捕らえられていた。
「キャプテン……っ!!」
息も絶え絶えな船長の呼吸音を聴き分けて、は後先も考えずに飛び出し、檻に駆け寄った。
「!?」
なんでこんなところに、とひどく驚いてゴンザとペンギンが声をあげる。その声にローは意識を取り戻した。
「……? よかった、無事だったか」
その声はかすれて、弱々しかった。それだけではどんなに彼の病状が悪いか理解した。実際には見ることができないが、彼の全身は白い痣に覆われて、激痛でろくに指先も動かせない状態だった。
「どうしてこのままにしてるの? キャプテン自分で治せるんでしょう!?」
「今は無理だ。こいつのせいで能力が使えない……」
ローは自分の両手をつなぐ手錠を示した。能力者の自由を封じる海楼石製だった。
「キャプテンを離して! 病気なの、このままじゃ死んじゃう……っ」
自分に武器を向けるブリキ兵たちに、は物怖じもせずに叫んだ。
「離してほしけりゃ、地下都市に案内しろ。そこの人形師と宝に用がある」
声は無機質で冷たい男のものだった。
ブリキ兵たちがうやうやしく頭を垂れる。
「……あなたがブラッドリー?」
痩せて右目に傷跡のある男は、歪んだ薄い笑みを浮かべた。
「あの忌々しい自立人形どもに聞いたか。お前たちが俺の人形を壊し、自立人形の信頼を得たのは知っている。しらを切るならこいつらを一人ひとり切り刻むぞ」
「ふざけんな……っ」
ローが激痛にしびれる体を無理やり起こす。だがブリキ兵によって棒で打たれ、彼は檻の中に再び倒れ込んだ。
両手を広げて、は船長をかばった。
「やめて! ……案内するわ」