第2章 グランドライン
はシャツのボタンがうまく止められずに手間取っている。甘やかすべきじゃないと思いつつ、急ぐあまりボタンと穴がずれて足りずに困っているを見かねて、ローは彼女を手伝った。
「……シャチに惚れたか?」
「……?」
全然意味がわからないという顔をするを見てローはすべて察し、シャチに同情した。
◇◆◇
甲板に行くとすでにシャチは顔面をボコボコにされていた。
ローは顔をしかめて、厳しい顔で腕組みしているペンギンを見る。
「俺の前にやるなよ」
「船長の手間を減らそうかと」
「そうかよ、じゃあこっちも頼む」
小声で言ってを指すと、「それはちょっと俺には荷が重いですよ」とペンギンは逃げた。
ハートの海賊団を結成するとき、誰が船長になるかはケンカで決めたわけだが、たまに体よく押し付けられたんじゃないかという気がする。
「もそこ座れ」
顔面ボコボコで正座しているシャチの隣を指したが、は「どこ?」と首を傾げた。
「ああ、そうか……9時の方向、3メートル先だ」
手探りで移動するを見かねて、ベポが「ここだよ」とエスコートする。格差のすさまじい光景だったが、もう仕方ないと割り切って、ローは二人を裁く裁判官としてペンギンが用意した椅子代わりの木箱の上に座った。
「……で?」
本心はこの件には触れたくはなかったが、船長としてそういうわけにもいかない。
は相変わらずきょとんとした顔をしているが、シャチは発言を許されて意を決したように膝の上で拳を握った。
「キャプテン、俺……っ! 本気なんだ!! 決して出来心とかそういうんじゃない! に惚れてんだよ!!」
予想通りの申し開きにローはため息をこらえる。これでシャチの失恋が確定してしまった。
決死の覚悟の告白にも、は無反応だった。自発的に察してくれないかとローはわずかばかりの期待を持ったが、シャチの目は困ったことに何一つ疑っていないようだった。
恋のキューピッドの反対語は何だろうかと思いつつ、ローは「は?」と水を向けた。
「……?」
「あーつまり、倉庫でシャチと船の風紀を乱すような行為に及んだ理由を聞いてる」