第2章 グランドライン
「が作ったのどれ?」
「小さいの」
「んじゃ俺これ全部もーらい!」
「あのな……」
露骨な態度に船長はこめかみを押さえる。ペンギンも同様にうんざりした顔をしていた。ベポはよくわかっていないようで「え? え?」と顔を巡らせ、当のは特に反応を示さず自分のおにぎりを行儀よく食べている。
(嫌な予感がする……)
そして事件は三日後に起こった。
◇◆◇
「キャプテン、キャプテン!」
ベポが大慌てで呼びに来たときからなんとなく察しがついた。
「どこだ」
「船倉で、とシャチが――」
みなまで聞きたくないと遮り、ローは鬼哭を手に現場へ向かう。
物資を保管しておく船内倉庫の中からは、「ん……ぁ」という声にならないの甘い声が聞こえてきた。
「…………!!」
怒りに任せて潜水艦・ポーラータングの船長は船倉の扉を蹴破った。
「キャキャキャ、キャプテン!?」
半裸のを抱いて、彼女の白い胸に顔を埋めていたシャチが血の気を引かせて振り返る。
死の外科医と恐れられ、北の海<ノースブルー>でも破格の懸賞金をかけられた海賊は、ブチギレ一歩手前の押し殺した声で自身のクルーに命令した。
「バラされて海に放り込まれたくなけりゃ、2秒で甲板に来い。もだ」
「ちょ、ちょっと待ってキャプテン、俺――」
「ここで遺言を言いてぇか?」
鬼哭に手をかけて言われ、シャチは死人一歩手前みたいな顔色で黙った。
甲板に行こうとしたにローは怒声を上げる。
「はまず服をちゃんと着ろ!」
「でも2秒って」
「船長命令より女は服を着るのを優先するのがうちのルールだ。わかったか!?」
「うん?」
あんまり状況がよくわかっていないようで、の態度はいつもどおりだ。キャプテンがなぜ怒っているのかわからず、不思議そうですらある。
あまりの事態の深刻さにローはめまいを覚えた。
「男は別だ。丸出しでもいいからさっさと来い」
「いやそんなせめて男の情け――!」
わたわたとズボンを履くシャチを、ローはROOMを広げ、問答無用で甲板に飛ばした。